数年前まで、都市部の食シーンを牽引していたのは間違いなくスパイスカレーだった。間借り営業の名店、行列、SNSに並ぶあいがけの一皿。その熱がひと段落したいま、次の主役として静かに、しかし確実に広がっているのがビリヤニだ。食べログマガジンやmacaroniといった食メディアの2026年トレンド予測でも、そろって名前が挙がっている。

ビリヤニは、スパイスと具材を米と一緒に炊き上げた南アジアの祝祭料理だ。カレーのように「かける」のではなく、米そのものに香りと出汁を吸わせる。各社から市販のビリヤニキットが発売され、家庭でも作れるようになったことが、上陸を一気に後押しした。

なぜ、カレーの「次」にちょうどよかったのか

TONEが見るに、ビリヤニのブームは偶然ではなく、スパイスカレーが耕した土壌の上に咲いている。この10年で、日本人の舌は「複雑なスパイスの重なり」を美味しいと感じるように変わった。かつてはマニアックだったクミンやカルダモンの香りが、いまや多くの人にとって"わかる"味になっている。その下地があったからこそ、より本格的で手間のかかるビリヤニが、抵抗なく受け入れられた。

つまりビリヤニは、ある日突然現れた流行ではない。カレーブームという長い助走があって初めて成立した、次の一歩なのだ。食のトレンドは断絶ではなく、地続きの階段を上るように動いていく。

スパイスの効いたインド料理とライス
複雑なスパイスの重なりを「美味しい」と感じる舌は、この10年で育った。

「味より体験」の時代にも合っている

もうひとつの追い風が、いまの食の楽しみ方だ。2026年のトレンドグルメには「見た目が強い」「動画にしたくなる」という共通項があると指摘されている。味そのものより、体験としての強度が問われる時代ということだ。

ビリヤニは、この条件にきれいに当てはまる。大鍋のふたを開けた瞬間に立ちのぼる湯気、鮮やかな黄色に染まった米、取り分ける所作。どれも絵になり、シェアしたくなる。しかも作る工程そのものが物語になる。「味わう」だけでなく「体験する」料理として、ビリヤニは今の空気にぴたりとはまっている。

ブームの本質は、家で作れること

ただ、TONEがこのブームで最も注目したいのは、外食ではなく家庭に入り込んだ点だ。スパイスカレーは「店で食べるもの」の色が濃かったが、ビリヤニはキットの登場で「休日に自分で炊くもの」になりつつある。これは大きい。外で消費するトレンドはいつか飽きられるが、家の台所に定着したものは、静かに文化として残る。

数年後、ビリヤニがブームという言葉で語られなくなったとき——それはむしろ、この料理が日本の食卓に根づいた証拠になる。流行が本物になるのは、話題にならなくなってからだ。

参考: 2026年のトレンドグルメ予測に関する報道。
出典:食べログマガジン「2026年のトレンドグルメを大予想!」 / macaroni「2026年『トレンドグルメ』を予測!」