駅前の用事で入ったコンビニで、レジ横の棚に目が止まった。靴下、ハンカチ、Tシャツ。食べ物や飲み物の隣に、服がふつうに並んでいる。数年前なら「急ぎで必要になったときの代用品」として見ていた棚だ。いまは、最初からそこで服を買う人がいるらしい。
ファミマが先に走り、セブンが続いた
先に動いたのはファミリーマートだ。自社ブランド「コンビニエンスウェア」を2021年3月に全国展開し、広告業界誌の報道によれば、2024年度の年間売上は130億円を超えた。2025年度は200億円を超えたと伝えられている。肌着や靴下といった「生活用品」の棚ではなく、ファッションとして選ばれる売り場を目指してきた流れだ。
ファミリーマートの「コンビニエンスウェア」は2021年3月に全国展開を始め、2024年度の年間売上は130億円を突破。2025年度は200億円を超え、今期も前年同期比で伸びていると説明されている。(記事の要点を編集部で要約)
出典:アパレル好調のファミマ(宣伝会議 AdverTimes・2026年8月5日)
そこへ追いかけたのがセブン-イレブン・ジャパンだ。2026年9月8日、アパレル大手アンドエスティホールディングス傘下の企業と、衣料品や服飾雑貨を共同開発すると発表した。9月25日から全国の店舗で順次発売し、衣料品の売上を2025年度の2倍にする計画だという。報道では、セブンの主な客層は50代で、若い層が手薄なことが課題とされている。
セブン-イレブン・ジャパンは8日、アンドエスティHD傘下企業と衣料品や服飾雑貨を共同開発し、25日から全国の店舗で順次発売すると発表した。若年層の獲得をねらい、衣料品の売上金額を2025年度比で2倍にする計画。(記事の要点を編集部で要約)
出典:セブン、アパレル大手と衣料品を共同開発(nippon.com/時事通信配信・2026年9月8日)
なお、品目数は報道によって差がある(23品目、28品目など)。ここでは数にはこだわらず、「ブランドを持つアパレル企業と組んだ」という点だけを事実として置いておく。
服が売れる理由は、服ではなく「立ち寄る回数」にある
ここからはTONEの見方だ。コンビニで服が売れる理由を「安いから」「便利だから」で片づけると、半分しか説明できない。ユニクロやしまむらのほうが、値段も品ぞろえも上だからだ。コンビニが持っているのは、服の強さではなく、立ち寄る回数だと思う。服屋には「服を買う日」にしか行かない。コンビニには、服を買う予定のない日に行く。そのついでに、色の合う靴下が目に入る。買うかどうかを悩む時間がほとんどない。
つまり、ここで競っているのは「服の良さ」より「服と出会う回数」だ。選ぶ手間をなくし、出会いを日常に混ぜる。この仕組みは、服を買うこと自体を面倒に感じる人ほどよく効くはずだ。客層の若返りを狙うセブンが、先に若い世代に支持されているブランドを持つ企業と組んだのも、同じ理由で読める。
もう一つ付け加えるなら、「ついで買い」が成り立つ条件がある。値段が分かりやすいこと、サイズ選びで迷わないこと、そして失敗しても痛くないこと。靴下やハンカチ、Tシャツのような小物・定番品がコンビニ向きなのは、この三つを満たしやすいからだ。逆に、似合うかどうかが一着ごとに分かれるアウターのような服は、同じ売り場に置いても同じようには動かないだろう。コンビニの強みは服の種類の広さではなく、「迷わず買える範囲」を上手に絞っていることにある。
コンビニの服を、うまく使う一手
では、買う側はどう見ればいいか。コンビニの服は「冒険しない服」だと割り切ると使いやすい。靴下、インナー、ハンカチのように、毎日使って消耗が早いものは、ここで補充する。一方で、体に合うかどうかが大事なアウターやパンツは、試着できる店で選ぶ。役割を分ければ、どちらの店も無理なく使える。
次にコンビニへ入ったら、飲み物の前に、服の棚を一周してみてほしい。いま自分のクローゼットで足りていないのは、どの1枚か。それが分かれば、その日のついで買いは、衝動ではなく補充になる。