雨の交差点で信号待ちをしている人の上着を見て、少し前ならこう思ったかもしれない。「今日は山にでも行くのだろうか」。防水シェルの光沢、絞れるフード、袖口のベルクロ。もとは登山道具として作られた一着が、いまはただの通勤着として、なんの違和感もなく街に立っている。

「ゴープコア」という名前がついた動き

この、アウトドアウェアの機能性をそのまま街のファッションに持ち込むスタイルには、「ゴープコア」という名前がついている。語源は登山者が行動食として持ち歩く、レーズンとピーナッツを混ぜた「Gorp」。ファッション系メディアの解説によれば、2026年もこの流れは続いており、背景には主に三つの要因があるという。長く使える質の良いものを選ぶというサステナブルな価値観、ナイロンジャケットやフリースといったユニセックスで着られるアイテムの多さ、そしてアークテリクスの「Veilance」やノース・フェイスの「Urban Exploration」など、アウトドアブランド自身が街向けラインを充実させてきたことだ。

「ゴープコア」は登山用行動食「Gorp」を語源とする、アウトドアウェアの機能性をストリートファッションに落とし込んだスタイル。2026年も継続する理由として、①長く着られる質の良いものを選ぶサステナブルな価値観、②ナイロンジャケットやフリースなどジェンダーレスなアイテムの多さ、③アークテリクス「Veilance」やノース・フェイス「Urban Exploration」などアウトドアブランドの街向けラインの充実、の3点が挙げられている。(記事の要点を編集部で要約)
出典:BRING WARDROBE NEWS「2026年もアツい『ゴープコア』とは?テック系との違いから次なるトレンドまで徹底解説」

機能を変えず、文脈だけを変える

ゴープコアがおもしろいのは、道具そのものは何も変わっていない点だ。防水性も、透湿性も、山で使うためのスペックのまま。変わったのは、それをどこで着るかという文脈だけだ。山道具に「街で着てもいい」という許可を与えただけで、まったく新しい買い手の層が生まれる。TONEがこれまで見てきた別の流行でも、モノの機能はそのままに使われる場面だけを差し替えることで需要が生まれる例は多かった。ゴープコアは、その典型がアウターというもっとも視界に入りやすいアイテムで起きているケースだと言える。テックウェアのように近未来的に作り込むのではなく、あくまで自然に、派手すぎず無難すぎない中庸さで街に馴染ませる。その「やりすぎない」さじ加減こそが、一過性のブームで終わらせない工夫なのだろう。

もうひとつ見逃せないのは、この流れが機能素材への信頼を、山という特殊な環境から日常という一番厳しい採点基準の場に引きずり出した、という点だ。雨の日の通勤、荷物を抱えての移動、一日中着たままの快適さ。街は山よりも地味だが、毎日繰り返されるぶん、道具としての実力がシビアに試される場でもある。ゴアテックスが日常着として定着しつつあるということは、その採点に静かに合格し続けているということだ。

次に一着選ぶときに

アウターを選ぶとき、「どこで着るか」を先に決めてから素材を選ぶのが、これまでの順番だった。ゴープコアはその順番を少し崩す。機能で選んだ一着が、結果としてどこでも着られる一着になる。山と街の境界線が消えていく感覚を、次のジャケット選びで試してみてほしい。