焼き上がりを待つ列の先頭で、釜の蓋が開く。香ばしい小麦の匂いに、黒胡椒とネギの香りが混ざって立ちのぼる。台湾の夜市でおなじみのその光景が、いま日本の商業施設や商店街で再現されている。主役は「胡椒餅(フージャオビン)」。胡椒を効かせた肉餡とネギを生地で包み、壺のような窯の内壁に貼りつけて焼く、台湾のストリートフードだ。
数字が示す、ブームの兆し
※記事内の写真はイメージ(台湾の夜市)です。
勢いは数字に表れている。TBSの報道によれば、東京で開催中の「台湾祭」では胡椒餅がダントツの一番人気で、週末には1日1000個以上が売れるという。都内には専門店も相次いで生まれ、ロケットニュース24は吉祥寺と四ツ谷の人気店を食べ比べる記事を出すほどだ。食べログマガジンは2026年のトレンドグルメ予想に胡椒餅を挙げていた。予想が、現実の行列として答え合わせされつつある。
「外カリ中ジュワ」は、失敗しない
なぜ胡椒餅なのか。TONEはまず、いまの若い世代の「うま確」志向との相性を挙げたい。見た目から確実においしいと分かるものにしかお金を使わない、という消費感覚だ。窯の壁で焼かれた胡椒餅は、表面はパリッと香ばしく、割れば肉汁がジュワッとあふれる。焼いている工程そのものが動画になり、食感の落差は一口目で裏切らない。一個数百円で「確実な当たり」を引ける食べ物は、物価高の時代にめっぽう強い。
タピオカとは、広がり方が違う
台湾グルメの上陸といえばタピオカを思い出すが、今回の広がり方は少し違うとTONEは見ている。タピオカが一気に仕掛けられて一気に冷めたのに対し、胡椒餅は台湾祭のような催事で「旅の記憶」と結びつきながら、じわじわと浸透してきた。訪台旅行で夜市の味を知った人が、日本で再会して列に並ぶ。SNSの熱狂より、体験の記憶が支えるブームは冷めにくい。屋台の一品というより「台湾の空気ごと」消費されているのが強さの理由だ。
肉まんとカレーパンの間のような顔をして、そのどちらでもない。この「知っているようで知らない」距離感も、ちょうどいい。次に街で窯を見つけたら、焼き上がりの時間を聞いてみてほしい。待つ数分も含めて、あれは夜市の体験なのだ。
参考: 胡椒餅の人気と専門店の動向に関する報道。
出典:TBS NEWS DIG「毎年恒例の『台湾祭』…注目の台湾グルメは『胡椒餅』 いまブームの兆し? 専門店も続々オープン」(Yahoo!ニュース) / ロケットニュース24「台湾の胡椒餅ブーム到来!?」(2026年4月12日) / 食べログマガジン「2026年のトレンドグルメを大予想!」