8月5日に開幕した夏の甲子園。テレビの前で開会式の行進を眺めていて、ふと気づいた人もいるかもしれない。スタンドの照明に照らされたグラウンドの色が、記憶にある「甲子園の白」より、心なしか多彩になっている。紺と白という長年の定番から、淡い桃色や薄い水色まで——今年、ユニフォームのデザインを変えた高校が目立つ。

「縦じまをなくした」「帽子と靴下を白くした」

神戸新聞NEXTが8月8日に伝えたところによれば、鳥取城北は伝統だった縦じまのデザインをなくし、享栄(愛知)は帽子や靴下を白く変更した。記事は「近年は暑さ対策で各校が工夫を凝らしており、デザインの変更はしばしばあるとか」と、その理由を伝えている。目的地は優勝旗であることに変わりはないが、そこへ向かう体を守る"装備"の設計思想が、確実に動いている。

白は、清廉さではなく機能で選ばれ始めた

高校野球のユニフォームは長らく、紺や白、太い縦じまという"伝統の型"を守ることが一種の美意識だった。丸刈りと同じで、簡素であることそのものが気迫の証だったように思う。だがここ数年の夏は、根性で乗り切れる気温をとうに超えている。濃色は熱を吸い、厚手の生地は体温を逃さない。「かっこいいから」ではなく「熱がこもらないから」白や淡色を選ぶ判断は、美意識というより生存戦略に近い。

TONEがこの動きに惹かれるのは、それが"何かをあきらめた"変化ではなく、"勝つために選び直した"変化だからだ。伝統を壊すことは簡単だが、伝統を守るために伝統の形を変えるのは、もっと難しい判断がいる。縦じまをなくした学校も、白を選んだ学校も、負けたくて変えたわけではない。むしろ「勝つための機能美」という、新しい伝統をその手で作り始めている。

機能を選ぶことは、もう特別なことじゃない

この夏、猛暑の中で"作業着"だった服が街着として支持を広げていることをTONEは別の記事でも書いた。現場も、球場も、答えは同じところに向かっている。涼しさや動きやすさという機能を正面から選ぶことは、もはや妥協ではなく、むしろいちばん誠実な選択になっている。

次に甲子園の中継を見るとき、ユニフォームの色にも少しだけ目をやってほしい。そこに映っているのは、暑さと戦いながらも「勝つ」という一点のために、細部まで判断を重ねてきた高校生たちの、もうひとつのスコアボードだ。

参考: 夏の甲子園、ユニフォームにも熱視線。デザイン変更で多彩に。
出典:神戸新聞NEXT「夏の甲子園、ユニホームにも熱視線 デザイン変更で多彩に ファンの通な楽しみ方」(2026年8月8日)