物価が上がった、と感じるか。そう聞かれて「いいえ」と答える人は、いまほとんどいない。日本銀行が10月13日に公表した調査では、1年前より物価が上がったと答えた人が95.5%に達した。同じ調査で、収入が増えたと答えた人も、過去最高になっている。
「上がった」は95.5%。「増えた」も過去最高の19.3%
日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」(第107回、2026年9月調査)は、全国の20歳以上4,000人に郵送で聞いたもので、有効回答は1,972人だった。報道によると、1年前と比べて物価が「上がった」と答えた人は95.5%。内訳は「かなり上がった」が68.9%、「少し上がった」が26.6%で、6月の前回調査の95.3%とほぼ変わらない。1年後に物価が上がると予想する人は88.6%、5年後は86.5%だった。5年後の予想は、平均で10.1%の上昇と報じられている。
日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」(第107回・2026年9月調査)を報じた記事より。物価が1年前より「上がった」は95.5%、1年後に「上がる」は88.6%。収入が「増えた」は19.3%で過去最高。暮らし向きDIはマイナス49.9。(記事の要点を編集部で要約)
出典:LIMO(Yahoo!ニュース)「物価が『上がった』と感じる人95.5%、1年後予想は88.6% 日銀10月13日公表」、四国新聞「1年後の物価『上がる』88%/日銀、9月の生活意識アンケート」(2026年10月13日)
ここで目を引くのは、もう一つの数字だ。1年前と比べて収入が「増えた」と答えた人は19.3%で、この調査で過去最高だという。物価の実感が95%を超える一方で、収入が増えた人も増えている。ただし、暮らし向きを聞いた指標(DI)はマイナス49.9と、小幅な改善にとどまると報じられた。収入が増えた人が増えても、暮らしが楽になったと感じる人は、まだ少ない。
「物価」は一つの数字ではなく、人ごとの買い物の束だ
この調査が聞いているのは、あくまで「どう感じるか」であって、実際の物価の上昇率ではない。95.5%という数字は、全員が同じ量の値上がりを経験したという意味でもない。毎日スーパーで食材を買う人と、外食が多い人では、見ている値札が違う。通勤にかかる費用、家賃、子どもの教育費。物価という言葉は一つだが、その中身は、一人ひとりの買い物の束だ。
だから、全体の数字が「上がった」で揃っていても、実際に家計を動かしているのは、自分の束の中の数品目であることが多い。TONEはそう見ている。10月16日にはコメの店頭価格が8週連続で下がったことを、9月1日には調味料の値上がりを取り上げた。同じ時期に、下がるものと上がるものが同居している。物価の実感が揃うのは、上がったものの記憶のほうが強く残るからではないか。これは調査から言えることではなく、編集部の見立てだ。
TONEの視点:「みんな上がった」から、「自分の3品目」へ
調査は、1年後も5年後も上がると見る人が多数であることを示している。それが続くと見るなら、必要なのは「物価が上がった」と嘆くことより、自分の家計のどこが動いたのかを知ることだ。節約したい人も、好きなものにはお金を使いたい人も、同じ一人の中にいる。そのどちらの判断も、自分の束を知らなければ、勘に頼ることになる。
全体の数字は、世の中の空気を読むには便利だ。けれど、買い物の判断には、あまり役に立たない。95.5%の中の、自分の1人分を見る。それが、この調査の数字を暮らしに使う、いちばん現実的な読み方に思える。
明日から使える一手
直近のレシートかカード明細を1か月分だけ開いて、1年前より高くなったと自分で思う品目を3つだけ書き出してみてほしい。全部を調べる必要はない。3つが分かれば、「上がった」という漠然とした不安が、具体的な数字に変わる。そのうえで、減らす品目と、これからも買う品目を、自分で決められる。