10月1日から、スーパーのビールの棚で、値札の並びが逆になった。これまで「安い代わり」だった発泡酒や第三のビールが上がり、ビールが下がった。ビールの値段は、ふつう一缶で数円しか動かない。その数円が、棚の景色を変えている。

税額が「54.25円」にそろった

10月の酒税改正で、ビール系飲料の税額は350ml当たり54.25円に一本化された。共同通信などの報道によると、ビールは63.35円から約9円下がり、発泡酒と第三のビールは46.99円から約7円上がった。9月まで商品の区分ごとに違っていた税額が、同じになったことになる。

価格にもすぐ表れた。報道では、サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」350ml缶の店頭想定価格は279円から270円になった。イオンはプライベートブランドの「プレミアム生ビール」を173円から162円に下げ、発泡酒は129円から137円に上げると9月30日に発表している。

2026年10月の酒税改正で、ビール系飲料の税額は350ml当たり54.25円に一本化。ビールは減税、発泡酒と第三のビールは増税となり、各社が価格を改定した。(記事の要点を編集部で要約)
出典:秋田魁新報(共同通信配信)「酒税改正でビール値下げ開始 1日から、イオンはPBで」(2026年10月1日)、nippon.com(時事通信)ビール系飲料の酒税改正に関する記事(2026年9月27日)

「第三」がビールに衣替えする

メーカーの動きも早い。共同通信は9月25日、大手各社が主力の第三のビールをビールとして売り直すと伝えた。報道によれば、サントリーは「金麦」を10月6日からビールに切り替え、店頭想定価格は206円程度。サッポロは「麦とホップ」と「GOLD STAR」を10月20日に、アサヒは「クリアアサヒ」を10月27日に、キリンは「本麒麟」を11月4日に切り替える予定だという。価格の上乗せは、増税分程度にとどまる見通しとされている。

税額が同じなら、安さだけで選ぶ理由は薄くなる。第三のビールは、ビールに近い味を低い税額で出すために生まれた商品だった。その前提が消えたので、中身をビールそのものに寄せるほうが筋が通る。9月には、施行前に低税率の商品をまとめ買いする動きもあったと報じられている。

ビール大手各社は、10月の酒税改正に合わせ、第三のビールの主力商品をビールに切り替えて発売する。価格差が縮まり、低価格帯での競争が激しくなるとみられる。(記事の要点を編集部で要約)
出典:秋田魁新報(共同通信配信)「「第三」、続々ビールに切り替え 10月酒税改正、低価格帯で競争」(2026年9月25日)

TONEの視点:「安さの理由」が消えたあとに残るもの

発泡酒や第三のビールは、ビールの味を「税金の差」で安く手に入れる商品だった。選ぶ理由はほぼ値段だった。税金の差がなくなったとき、人は何で選ぶのか。

ここで起きているのは、値下がりではなく「選ぶ基準の戻り」だと思う。10月16日にはコメの値下がりを取り上げたが、同じ構造がある。値段が選ぶ理由のほとんどを占めていたときは、違いは見えにくい。税金で生まれていた値段の差がなくなると、味、銘柄、飲む場面といった、本来の選ぶ理由が前に出てくる。「いつもの一本」は、安いから選んでいたのか、好きだから選んでいたのか。税額が同じになった今、それを確かめやすくなった。ただし値札の差が完全になくなるわけではなく、金麦のように200円台前半の商品と、270円のプレミアムビールが並ぶ棚は、引き続き値段でも選べる。

一方で、これは売る側にとって厳しい。値段で買われていた商品は、値段で選ばれなくなった途端に、中身で勝負するしかない。第三のビールが「ビール」の名前になるのは、その覚悟の表れとも読める。ただし、売れ行きの変化を示すデータは、この記事を書いた時点ではまだ出ていない。

明日から使える一手

次に棚の前に立ったら、いつもの銘柄の隣に、いままで手に取らなかったビールを一本だけ並べてみてほしい。税額がそろった今は、「安いから」ではなく「好きだから」で選び直すのにちょうどいい機会だ。自分の「いつもの一本」の理由を、一度だけ確かめてみる。それだけで、買い物の意味が少し変わる。

飲酒は20歳になってから。