秋の魚屋の前で、「去年はもっと安かった気がする」と思った人は多いかもしれない。サンマは、数年続いた不漁のあと、2025年に水揚げが増えた。だが2026年の見通しは、その去年を大きく下回る。7月に出た予報の数字を、「去年を普通と思わない」ための基準として読んでおきたい。
予報の数字:去年の4割ほど
水産庁と水産研究・教育機構が7月28日に出した長期漁海況予報によると、今年の漁期(8〜12月)に日本の漁船が操業する海域へ来るサンマの推定分布量は42.9万トン。昨年の109.9万トンを大きく下回り、比較できる2003年以降で最も少ない。主な漁獲対象になる1歳魚の割合も17.2%で、昨年の59.6%より低い。魚体も小ぶりで、1歳魚の体重は100グラム台〜110グラム台が中心になる見通しだ。漁場は、主に日本の排他的経済水域の外の公海になるとされている。
水産庁は、今年のサンマの来遊量は昨年の水準を下回り、推定分布量は42.9万トンで比較可能な2003年以降で最少と発表した。魚体は昨年より小ぶりになる見通し。(記事の要点を編集部で要約)
出典:水産庁「サンマの長期漁海況予報が発表されました」(2026年7月28日)/時事通信「今年のサンマ来遊、低水準予測 分布が過去最少、魚体も小ぶりか―水産庁」(2026年7月28日)
ここで注意したいのは、これが漁期前の「予報」だという点だ。実際の水揚げ量や、この秋の店頭価格がどうなっているかは、今回の調べでは確認できていない。予報は外れることもあるので、「不漁が決まった」と読むのは早い。
去年が「多かった」ことが、感じ方をずらす
もう一つ、数字を並べておく。共同通信の報道によると、2025年のサンマの全国水揚げ量は6万4737トンで、2024年の約1.7倍。10キロあたりの価格は約3割安かったとされる。長期で見ればまだ低い水準だが、前の年と比べれば「買いやすい年」だった。
2025年のサンマ水揚げは6万4737トンで、前年の約1.7倍。10キロ当たりの価格は前年比で約3割安かった。(記事の要点を編集部で要約)
出典:共同通信「25年サンマ水揚げ前年1・7倍」(2026年1月6日、OANDA Lab配信)
8月には今季の初水揚げがあり、根室・花咲港の競りでは1キロ1,458円の値がついたと北海道新聞が伝えている。ただし初物は量が少なく、値が高く出やすい。この数字だけで、秋全体の値段は読めない。
去年が増えた年だったために、「サンマは少し戻った」という印象が残っている人もいるだろう。今年はその印象を一度リセットして見たほうがいい。量が増えた年と、減る予報の年を、同じ棚の前で比べるのは公平ではない。
TONEの視点:分布量は「いる量」、店頭は「獲れた量」
予報の「推定分布量」は、海にいる魚の見積もりだ。店に並ぶのは、そのうち実際に獲れて運ばれた分で、漁場が遠いか、船が出られるか、魚が網に入るかで変わる。海にいる量、水揚げ量、店頭の値段は、三つ別の数字として見る。
棚の前でできる一手は二つある。一つは、去年の値段ではなく「予報の年の値段」と比べること。もう一つは、サイズの表示や産地、冷凍かどうかを見て、同じサンマでも中身が違うことを前提に選ぶことだ。小ぶりな年は、一尾あたりの値段より、買う目的(焼くのか、煮るのか、何人で食べるのか)で選んだほうが納得しやすい。
秋の味覚は、毎年同じ顔をしているとは限らない。今年のサンマは「少ない年の味」として、記録しておくつもりで買ってみるといい。
※本記事は2026年10月24日時点の報道・公表資料に基づく。今季の水揚げ量・価格は水産庁や各漁協の最新の発表を参照のこと。
根室・花咲港で主力の大型船が初水揚げし、競りで1キロ1,458円の値がついた。(記事の要点を編集部で要約)
出典:北海道新聞「根室・花咲港でサンマ主力の大型船が初水揚げ 1キロ1458円」(ドコモ dメニューニュース配信)