「ととのう」という言葉を、いまや説明抜きで使えるようになった。熱いサウナ室、冷たい水風呂、外気で休む——この温冷交代のあとに訪れる、頭が澄んだ多幸感。2019年のドラマ『サ道』を火付け役に広まったこの感覚は、第3次サウナブームとして完全に定着した。そしてブームは次の段階、屋外へと向かい始めている。日経クロストレンドなどの分析では、次のトレンドは「テントサウナ」「アウトドアサウナ」だと予測されている。
なぜ、Z世代はサウナに向かうのか
若者を惹きつける理由は、意外なほど今の時代と噛み合っている。ひとつは、サウナ室にスマホを持ち込めないことだ。強制的に画面から切り離される数十分は、通知に追われる日常のなかでは貴重な「断線」の時間になる。前回TONEが取り上げた「アテンション・デトックス」——注意を意図的に手放す流れとも、きれいに重なる。
もうひとつは、タイパの良さだ。長い瞑想やジム通いと違い、サウナは1〜2時間で確実に"効く"。短時間で心身がリセットされる手応えは、効率を重んじる若い世代にとって理にかなっている。感覚的でありながら、コスパもいい。この両立が、サウナを一過性で終わらせなかった。
「整える」の主戦場が、自然へ移る
そして今、その舞台が施設の外へ広がっている。個室サウナ、テントサウナ、湖畔のアウトドアサウナ。検索データでもこれらのキーワードが伸びているという。TONEは、この「外へ出ていく」動きに、ブームの成熟を見る。
都市の整ったサウナで満たされた人々が、次に求めるのは「自然のなかでととのう」という一段深い体験だ。人工的に管理された快適さの先にある、川のせせらぎや木々の匂いを伴う"ととのい"。これは、加工されていない現実の手触りを求める、いまの消費全体の空気とも通じている。整える対象が、体から、体験の質そのものへと移っているのだ。
ブームではなく、習慣へ
サウナが面白いのは、流行のわりに飽きられる気配が薄いことだ。それはたぶん、サウナが「話題」ではなく「習慣」として体に組み込まれるからだ。週に一度、決まったように汗をかき、水風呂に沈み、外気で息を整える。話題にならなくなっても、人はサウナ室の扉を開け続ける。
次の週末、疲れが抜けないと感じたら、スマホを置いて熱い部屋にこもってみてほしい。整うのは体だけではない。奪われ続けた注意も、そこで静かに戻ってくる。
参考: サウナブームの背景・次のトレンド予測に関する報道。
出典:日経クロストレンド「バズワード『ととのう』誕生秘話」 / SORENA「Z世代のサウナ活用術!多様化したサウナのトレンドは?」