食料品の消費税を、2年間だけ1%にする。そのための法案が、10月20日に衆議院で審議に入った。値札の数字が変わるのは、早くても来年の春だ。それでも、スーパーの棚の前に立つ私たちの計算は、いまから少しずつ変わりはじめている。
8%から1%へ。ただし、外食は入らない
報道によると、政府が閣議決定した案は、2027年4月から2年間に限って、食料品の消費税率を現在の8%から1%に引き下げるものだ。対象は、外食と酒類を除く、軽減税率が適用されている飲食料品。減税は2029年3月に終わる予定で、財源は2年間で約10兆円と報じられている。政府・与党は、11月上旬までの衆院通過と、12月12日の会期末までの成立をめざす。一方で、与党は参議院で過半数を持っておらず、法案が成立するかどうか、細部がどうなるかは、まだ決まっていない。
食料品の消費税減税関連法案の審議入り(2026年10月20日予定)を伝える報道より。2027年4月から2年間、食料品の税率を8%から1%に引き下げる案で、外食と酒類は対象外。財源は2年間で約10兆円とされ、野党は財源と制度設計をただす構え。(記事の要点を編集部で要約)
出典:NHK「消費税減税法案 20日審議入り合意 自民・民改国対委員長会談」(2026年10月16日)、時事通信「野党、財源・制度設計追及へ 消費減税法案、20日から審議」(2026年10月17日)、共同通信(Yahoo!ニュース)「消費減税、財源2年で10兆円 中小農家、外食支援も」
ここでは、減税の賛否は扱わない。TONEが見たいのは、この案が通ったと仮定したとき、買い物の現場で何が起きるのかだ。そして、この話題は「いくら安くなるか」だけで読むと、見落とすことが多い。
「7%分」は、思ったより小さい。そして、全部が対象ではない
税抜1,000円の食品は、いまの税率8%なら税込1,080円だ。税率が1%になれば1,010円で、差は70円になる。税込で月4万円ぶんの食料品を買っている世帯を例にすると、税抜では約3万7,000円なので、1%課税後は約3万7,400円。月に約2,600円、年にして約3万1,000円の差だ。これは編集部が出した単純な試算で、実際の家計は人によって違う。買う食品の中に外食や酒類が多い人は、この差はもっと小さくなる。
小さいと見るか、大きいと見るかは人による。ただ、「1%」という数字の印象から、食費が7割や8割も安くなるように感じてしまう人もいる。実際に下がるのは、税込価格の約6.5%ぶんだ。しかも、対象は外食と酒類を除く飲食料品に限られる。同じ弁当でも、買って持ち帰れば対象で、店内で食べれば対象外になる。この線引きは、いまの軽減税率でも同じ形だ。今回の案も対象から外食を除くとされているため、線そのものは残る。ただし、線の両側の税率の差は、8%と10%の2ポイントから、1%と10%の9ポイントへ広がる。
TONEの視点:値札の前で、「いつ買うか」が変わる
税率が変わる日付が決まっていると、買い物の時期に影響が出る。たとえば、買いだめがきく米や調味料、缶詰などは、2027年4月を待つかどうかを考える人が出てくるだろう。逆に、野党は「2年後に税率が戻る」ことを批判している。2029年3月が近づけば、今度は駆け込みの買い物が起こるかもしれない。これは過去の増税のときに見られた動きの裏返しで、編集部の見立てだ。確かなことは、法案の行方が決まるまで言えない。買い物の予定を変えるかどうかは、成立の見通しと、実際の開始日が固まってからでも遅くない。
もう一つ。税率が下がることと、値札が下がることは、同じではない。税込価格は、税抜価格と税率の掛け算でできている。税率が下がっても、仕入れ値や人件費が上がれば、税抜の価格は上がりうる。10月に3,153品目が値上げされたことは先日書いたが、税が下がる日にも、この動きは止まっていないかもしれない。税込の値札だけを見ていると、どの部分が変わったのかが分からなくなる。
明日から使える一手
よく買う食品を3つ選び、いまの税込価格と、税抜価格を並べてメモしておく。レシートには、税抜価格と税率が書かれていることが多い。これを残しておけば、来年春に税率が変わった日、値札の変化のうち「税の分」と「それ以外」を、自分で切り分けられる。減税が通っても通らなくても、この習慣は家計の見方として残る。