夕方の商店街で、ワークマンのロゴが入った紙袋を提げた若者とすれ違った。中身は作業着ではなく、涼しさを求めて買ったTシャツやレインパーカーかもしれない。この夏、そんな光景が街のあちこちで増えている。理由は単純だ。今年の暑さは、もう「がんばれば乗り切れる」レベルを超えていた。

観測史上最長、5日連続の酷暑日

2026年8月5日に報じられた国内アパレル関連大手7月度の既存店売上を見ると、その答えがはっきり出ている。ユニクロ国内事業が前年同月比4.3%増、良品計画が9.5%増と軒並み好調な中、突出していたのがワークマンの16.3%増だ。背景にあるのは、7月21日から25日にかけて国内で40℃以上の酷暑日が5日連続で観測されたという、過去最長の記録。気温が最後に急上昇したことで、消費者は夏物をまとめ買いする動きを見せたという。ワークマンで売れたのは、汗を素早く逃すファンウェアや防暑小物、突然の雷雨に備えるレインウェアだった。

"現場のための服"が、生存のための普段着になった

ワークマンはもともと、建設や物流の現場で働く人のための店だった。それが数年前から「ワークマン女子」のように普段着として支持を広げてきたのは知られている。ただ、その越境の理由はこれまで「安くてかわいいから」だったはずだ。今年はそこに、もっと切実な理由が重なった。命に関わる暑さの中で、涼しさや機能を正面から選ぶことが、いちばん誠実な判断になったということだ。

TONEが以前、猛暑の白Tシャツについて書いたとき、「涼しさという機能」と「上質さという気分」は矛盾せず同じ人の中で共存すると考えた。今回のワークマンの数字は、その機能側がここまで前面に出た夏はなかった、という事実を裏づけている。作業服を長年つくってきた人たちは、そもそも「実際に炎天下で働く人」の目線でモノを設計してきた。だからこそ、この記録的な暑さにいちばん強かったのは、ファッションブランドではなく作業服の店だった——そう見ると、今年の数字は偶然ではなく必然に思える。

「作業服」という言葉が古くなる日

ワークマンの紙袋を提げて歩くことに、もう気恥ずかしさはない。それどころか、猛暑という現実の前では、いちばん理にかなった選択に見える。来年も同じ暑さが続くなら、街着と作業着を分けてきた「作業服」という言葉そのものが、少しずつ意味を失っていくのかもしれない。

参考: 夏物好調でユニクロ4.3%増、国内アパレル関連大手2026年7月度。
出典:FASHIONSNAP「夏物好調でユニクロ4.3%増 国内アパレル関連大手2026年7月度」(Yahoo!ニュース、2026年8月5日配信)